桂院生室

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工学研究科の大学院生ってなにやってんの?

京機会工場見学【デンソー② 】〜量子コンピュータ編〜

2019/9/23

京機会工場見学デンソー編後半。

 

デンソー高棚製作所を後にし、初日の宿であるデンソー安城荘に向かった。

 

 安城荘に到着後、技術講演会のため研修ホールに向かった。

工場見学のしおりには技術講演会とのみ記されており、内容は知らされていなかった。

 さて、どんなテーマであろうか。

 

量子コンピュータが変える未来

 

どうやら量子コンピュータに関する講演のようだ。

(工学部生にはなかなか受けが良さそうなテーマだ。)

講演者は寺部雅能(てらべまさよし)氏という方で、30代の若い男性であった。

(教授のような年配の技術者の方が出てくるのかなと思っていた。)

 

 

さて、講演の内容に関して記そうと思う。

内容は大きく4つに分けられる。

 

  1:自己紹介

  2:量子コンピュータとは?

  3:自動車業界が迎える変革期

  4:量子コンピュータの挑戦

 

先に講演の結論を述べておくと、

量子コンピュータはもう使える。

量子コンピュータをどう商用に利用するか考え中。

工学部生はもっと市場を見ろ!

といった内容であった。

 

詳しい内容に移ろう。

 まず、寺部氏の自己紹介から始まった。

寺部氏はデンソーのエレクトロニクス研究部に所属している方で、モビリティ社会の変革を目標に、量子コンピュータ事業を手がけているとのことだった。

(学生時代に63カ国をバックパッカーで渡り歩いた経験を持つ猛者で、モビリティ社会にとどまらず世界中を変革したいという熱意に満ち溢れていた。)

 

自己紹介の中で最も印象に残った話は、世界の変革に向けたプロセスであった。

寺部氏曰く、世界の変革には

 

 情熱 → 必然性 → 戦略 → 世界の変革

 

というプロセスを踏む必要があるようだ。

 

ここでの必然性に関する話が印象的であった。

氏曰く、必然性には2種類あるとのことであった。

 ①業務の必然性

 ②自分であることの必然性

 

②の「自分であることの必然性」という言葉が胸に響いた。

(仮に自分が宇宙に行く際に、自分であることの必然性はあるのか。)

 

氏は量子コンピュータ事業に取り組むのが「自分しかいない!」と認められるよう、技術分野だけでなく経済分野に関しても深く勉強したそうだ。

 

自己紹介は「技術以外に市場に結びつける力も必要」の言葉で締めくくられた。

 

 

次に量子コンピュータに関する説明がなされた。

量子コンピュータの計算速度は理論上、スパコンの9000兆倍も可能らしい。

量子コンピュータの計算速度が速い理由は

 ・・・・・難しい。

(調べれば調べるほど難しい。)

 

とりあえずの理解は

通常のコンピュータが「0」、「1」で書くもの(単位はbit)を

量子コンピュータなら「0、1の重ね合わせ」で書ける(単位はqbit)。

よって、2^n(bit)の情報をn(qbit)で伝えられるようになるから嬉しい!

(情報が軽くなって計算速度が上がる。)

といったものだろうか。

(もつれに関してイマイチ説明できない。)

 

 話を戻そう。

実は量子コンピュータはすでにD-wave社(カナダ)から販売されている。

大きさは3m四方と大きく、中身はほとんどが半導体を冷やすための冷却装置だそうだ。

(1台17億円らしい。)

 

実際に量子コンピュータは動くし使えるのだ。

f:id:evolveinspace:20191004201959p:plain

D-wave 2000Q

 

 

続いて、自動車業界が迎える変革期についてのお話があった。

 今、自動車業界は「100年に一度」といわれる変革期を迎えている。

この大変革は変革の要因の頭文字をとって「CASE」と呼ばれている。

 

Connected            :車がネットワークにつながる。(車のIoT端末化)

Autonomuos          :自動運転

Share & Services  :カーシェア(モノの販売→サービスの販売)

Electric                  :電気自動車(エンジン→モーター)

 

寺部氏が強く主張したのは "Share & Services"  の変革についてであった。

他の3つの "Connected" , "Autonomuos" , "Electric" は技術の変革であるが、

 "Share & Services" は市場の変革であり、毛色が異なる。

 

技術的な変革と市場の変革の最大の違いは、

技術の変革が「1→10」の変化であるのに対し、

市場の変革は  「0→1」

の変化であるということであった。

 

 要するに

世界を変えるには市場の変革を行ったほうが手っ取り早い

という感じだ。

 

 

自動車業界における市場の変革は、

車という「モノ」の販売から車による「サービス」の販売への変革を指す。

この変革を「MaaS」(Mobility as a Service)という言葉で言い表すことがある。

カーシェアリングや移動の最適化といったサービスが自動車を購入し保有する必要性を薄めていきそうだ。

 

※MaaSについては下記を参考に、

https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2018/69_1.pdf (引用:国土交通省

 

寺部氏は市場の変革により生じるであろう莫大な市場に目を向けているようだった。

 

 

最後に量子コンピュータの挑戦についてであった。

一言でいうと、この動画を見た。


Quantum Technology for Mobility IoT / 量子コンピュータが拓く新たなモビリティIoT

 

 

質疑応答では、現行の量子コンピュータの改善したい点の質問があった。

これに対し、

「今はうまく使えるqbitが50qbitほどだが、これを2000qbitまでつなげたい。しかし、構造上中々難しい。」

という回答であった。

 

技術講演会はこうして幕を閉じた。

 

 

結論を再び述べておく。

量子コンピュータはもう使える。

量子コンピュータをどう商用に利用するか考え中。

工学部生はもっと市場を見ろ!

といった感じだ。

 

 

一応寺部さんの著書を載せておく。

(僕はまだ読んでません。)

 

 

 

それではまた。